
淀川(ヨドゴウ)の上部、中俣までの間は、屋久島の中でもとびきり幻想的で美しい渓谷美を見せてくれる。
それは、夢に出てくる様な渓流の姿で、
だから実際に歩いていると、
自分が今、夢の中にいるのか、本当の現実の中にいるのか分からなくなってしまう。
小雨が降っていたが、
それがまたこの沢には似合ったりする。
枝から落ちる水滴が、きれいな波紋を見せてくれた。


この沢は、いかにも屋久島的な風景をそこかしこで見せてくれて、
どこを向いても、何時間いても飽きることがない。
いったいいつ頃、この場所にごろごろと流れ着いてきたのか…
大きな卵の様な石が転がっていた。

屋久島といえば屋久杉の森だが、こんな景色もまた屋久島らしい。
今回で、私が屋久島を訪れたのは13回目。
杉だけが屋久島では無い。

と言いつつも、しっかりと会っておきたいのがこの大王杉だ。
縄文杉の様な圧倒的な存在感は無くて、何かしら考え事をしているとそのまま通りすぎてしまう。
しかし、ふと何かしら気配を感じて見上げると…じっと私たちを見ている大きな大きな姿がそこにある。
何も言わず、ただそこにいるだけ。だけどじっと見つめてくれている姿は、
無口だが優しく、怒り出せば怖い怖い…父親の様な透明な存在感だ。

縄文杉はいつ会っても堂々としている。
でも、なぜかしら寂しくて、悲しい気分になってしまうのは私だけだろうか…
沢山の人の視線にさらされて、素っ裸の肌を大勢に刺されている姿を想像してしまう。
島の長老達とは、できれば霧に包まれた中、
ただ1人でひっそりと、ビクビクしながら会うのがよい。
そんなこと考えるのは、私だけだろうか…

皆さんご存じのウイルソン株のハートマークだ。
最近は沢山の雑誌や絵はがきにも、この構図が使われ出した。
でも私が最初に屋久島を訪れた頃には、こんな構図の写真は無かった。
私が初めて株の中に入ったとき、空に抜ける空間から見えるまっすぐな杉の木を取りたくて、
しかし立ったままでは画角的に穴全体がフレームの中に入らなかったので、
カメラを地面に置いてノーファインダーで取ったら、偶然にハートマークが撮れたのだ。
それを同行した地元のガイドさんに見せたら、「あっ、ハートマークだ」とびっくりしていた。
そのときは、あれ?地元なのに知らなかったの?と思ったが…

今回偶然に会った、私が初めてウイルソン株に入った時に一緒だった吉原ガイド(右はじ)。
すれ違うとき、「あの人がウイルソン株のハートマークを見つけた人です~!」と、
お客さん達に話し出した。…恥ずかしかった。
が、ちょっとうれしいかな。。

屋久島の森は、いつ訪れてもパワーがもらえる。
今年中にまた行きたいと思っている。

2010.05/17-21 K&K